桜島が見える鹿児島市の東開町。九州森林管理局鹿児島銘木市場がある。三月四日、屋久杉入札最後の日。入札開始は午前9時であるにも関わらず、7時には多くの業者が集まっていた。穂原会長は朝方6時には会場に入り、入札にかけられるすべての屋久杉を見て回ったという。九州銘木からは、穂原会長・穂原社長・原田が入札に臨む。6ヶ月前から今日の日の為に準備してきた。市場が本社工場の目の前にある地の利を生かし、会長・社長は、ほぼ毎日。原田は、関東営業担当にありながら月の半分は鹿児島に戻り、吟味に徹した。なぜここまで心血注ぐのかは言うまでもないが、入札の失敗は、10年後20年後の商品の素材が無いことを意味する。まさに決死の覚悟である。それだけではない。昭和二十四年から約七十年にわたって続いてきた銘木屋久杉の入札が今回を持って終了するのである。九州銘木のすべてのスタッフが特別な思いで今日の日を迎えたのだ。中でも穂原会長は創業来四十一年間欠かさず参加してきた入札の終了を、「子どもとの別れに近い寂しさがある・・」